2月の花 沈丁花
 節分を過ぎると、風は冷たいが陽射しは春のものに感じられる。季節の先駈けとして香る花といえば、 春は沈丁花であり秋は金木犀であろうか。沈丁花は春一番に咲くだけに、前の年の秋にはすでに花芽が 準備され、一月にはえんじ色の蕾みがふくらむ。散歩のときなど、道の曲がり角でふっと香ってくるの はこの花の匂いである。花の香り、ものの匂いは強く記憶に結びついていて、いつも子どものころの情 景が脳裏に浮かんでくる。たいていは小学生のころ友達と遊んでいる光景であるが、そこに花木があっ てその花の匂いに包まれていたのかもしれない。あと、桃の実がつくころ湿り気を帯びた土の匂いが部 屋に流れ込んできたときなど、しんとした夜に窓をあけて勉強机に向かう自分の姿と、青春の気分まで あざやかによみがえってくることがある。(2004.2.1)

横浜の沈丁花

1月の蕾み